英語で「給料」と言いたいとき、paycheck と salary のどちらを使えばいいのか迷う人は多いですよね。どちらも「お金をもらう」という点では同じですが、焦点が当たる部分がまったく違います。
たとえば、アメリカのオフィスでのこんな会話を想像してみてください。
A: I got my paycheck today! Let’s grab dinner — my treat!
B: Nice! My salary was just raised last month, so it’s on me next time.
この会話では、A は「給料日が来て、今ちょうどお金を手にした」瞬間を話しています。一方、B は「昇給」という制度的な金額の変化について話しています。つまり、
- paycheck:給料が支払われる瞬間や“受け取った実感”を指す。
- salary:雇用契約に基づく“固定の金額・待遇”を指す。
つまり、paycheck は「今日もらった給料」=感覚的・リアルタイムなお金、salary は「自分の給料体系」=制度的・安定的なお金を表します。ネイティブはこの違いを自然に使い分けています。
例文でニュアンスを確認
- My salary is $60,000 a year.(私は年収6万ドルの固定給です)
- I got my paycheck this morning!(今朝、給料が振り込まれた!)
- She’s hoping for a higher salary when she changes jobs.(転職したらもっと高い給料を望んでいる)
また、wage は時給や日給など「働いた時間や日数に応じて支払われる給料」。工場やレストラン勤務など時間労働型の職種でよく使われます。
- I got my paycheck today.(今日は給料日だ!)
- My salary increased last year.(去年、年収が上がった)
- The hourly wage is $20.(時給は20ドルです)
- salary=月給や年俸などの固定給。契約書や履歴書で使う正式な金額の話。
- paycheck=給料の受け取りそのもの。明細や振り込み、支給日の実感に近い。
- wage=時給や日給など時間や日数に比例する報酬。
- 日常会話は paycheck が多め。ビジネス文書は salary が基本。
はじめに
英語で給料の話をするとき、paycheck と salary のどちらを選べば自然に聞こえるのか。留学や仕事で英語を使い始めると、最初にここでつまずきがちです。この記事ではネイティブの使い分けとニュアンス、さらにスラングまで、専門家の視点でやさしく解説します。
- paycheck と salary の核心的な違い
- 仕事と日常での自然な言い回し
- 履歴書や面接で外さない表現
- リアルなスラングと文化背景
paycheck と salary の基本的な違いとは?
英語では「給料」を表す言葉が複数ありますが、どの単語も“お金そのもの”だけでなく、支払いの仕組みや文化の違いまで含んでいます。日本語だと「給料」でまとめられますが、英語では場面によって言い分けるのが自然です。
まず大枠を整理すると…
- salary:一定期間ごとに支払われる「固定給」。年俸・月給制など。
- paycheck:給料の支払いそのもの、または支給明細書・受け取る瞬間の実感。
- wage:時間や日数に比例する「時給」「日給」。労働時間ベースの報酬。
つまり、salary は契約上の安定した金額を表し、paycheck は実際に手元に入る瞬間を強調。 wage は時間単位で計算されるため、アルバイトや時間労働に使われることが多い単語です。
アメリカでは給料が「隔週払い(biweekly)」や「月2回払い(semimonthly)」のことも多く、支給日ごとに paycheck が発行される習慣が根付いています。だからこそ、「I got my paycheck today.」という言葉にリアルな喜びのニュアンスがこもります。
一方で salary は職務条件や雇用契約の中で用いられ、「My salary is $60,000 a year.」のように、年単位の安定性を示します。
使い分けの軸
- salary: 固定給。ホワイトカラー職・オフィス勤務に多い。
- paycheck: 支給の出来事・受け取りの瞬間・給料日感覚。
- wage: 時給・日給。シフト制・パートタイム勤務で一般的。
- My salary is forty five thousand dollars a year.(私は年収4万5千ドルの固定給です)
- I got my paycheck today.(今日給料をもらった!)
- The hourly wage is twenty dollars.(時給は20ドルです)
salary は「条件を話す言葉」、paycheck は「実感を話す言葉」、wage は「時間で稼ぐ言葉」。この3つを意識して使い分けると、英語での給料トークがぐっと自然になります。
ネイティブがよく使う pay 系英語表現
ネイティブの日常会話では、paycheck を中心とした「支給のタイミング」や「生活リズム」を表すフレーズが頻繁に登場します。給料日は小さなイベントのようなもの。そのリアルな温度感が英語のフレーズには表れています。
- get my paycheck:給料を受け取る(例:I finally got my paycheck!)
- payday:給料日(例:It’s payday tomorrow!)
- live paycheck to paycheck:給料ギリギリで生活する
- take home pay:税金などを引いた「手取り」
- direct deposit:口座への振り込み
- It is payday tomorrow.(明日は給料日!)
- I am waiting for my paycheck to clear.(給料が振り込まれるのを待っている)
- We are paid by direct deposit.(私たちは振り込み払いです)
- My take home pay changed after taxes.(税金後の手取りが変わった)
日本語でも「給料日、やっと来た!」という感覚がありますよね。英語の payday も同じ温度で使われています。特に「live paycheck to paycheck」は、“貯金できない生活”を表すリアルなフレーズで、ニュースやSNSでもよく見られます。
salary の使い方とビジネス英語での注意点
フォーマルな文脈では、salary は単なる金額ではなく「待遇を含めた報酬体系」を示す言葉です。採用面接・契約書・社内評価など、文書で明示する金額に使われます。
- annual salary:年収
- base salary:基本給
- gross salary:税引き前の総額
- net salary:税引き後(=手取り)
- total compensation:基本給+ボーナスなどの合計報酬
このあたりの語彙を使い分けることで、ビジネスシーンでも「伝わる英語」になります。
- I am on a fixed salary.(私は固定給です)
- Her salary increased by ten percent.(彼女の給料が10%上がった)
- What is the base salary for this role.(この職種の基本給はいくらですか)
- Could we discuss the total compensation.(総報酬について話せますか)
- 年収は「gross(税引き前)」か「net(税引き後)」かを確認
- 支払い頻度は monthly, biweekly など会社によって異なる
- bonus や stock も total compensation に含まれる
給料に関するスラングとリアル表現
英語の世界では、「お金の話=ちょっとデリケート」。でも同時に、日常会話ではとてもよく登場するテーマでもあります。そんなとき、ネイティブはかしこまった単語ではなく、テンポの良いスラングで軽く表現します。真面目すぎず、ユーモアを交えて話すのがポイントです。
- bucks:ドルの口語。たとえば「20 bucks=20ドル」
- bread / dough:「お金」を意味するスラング。パンや生地のように「生活の糧」という感覚から派生。
- cash:現金という意味ですが、会話では「お金」一般として使われることも多い。
- make good money:「けっこう稼ぐ」「収入がいい」
- pull in:「〜を稼ぐ」というカジュアルな動詞表現。earn よりくだけた印象。
- side hustle:副業、サブビジネス。ネットやSNSで急増中の言葉。
たとえば、友人同士の会話で「He makes good money.」と言えば、「彼、結構稼いでるらしいよ」のような軽いトーン。金額には触れず、ほのめかすように収入を表すのが英語の上品なマナーです。
- He makes good money.(彼はけっこう稼いでいる)
- I am saving up part of my paycheck.(給料の一部を貯金している)
- This side hustle helps with the bills.(この副業で生活費が助かっている)
- I need some extra cash this month.(今月はちょっと余分なお金が必要)
- We are short on dough this week.(今週ちょっと金欠気味)
スラング表現は「親しみ」と「軽さ」を演出しますが、相手との距離感によってはカジュアルすぎる印象を与えることもあります。特に職場では注意が必要です。
たとえば “I made a ton of cash last month.”(先月かなり稼いだ)と上司に言うと、冗談が通じない場面も。信頼関係ができてから使うのが無難です。
注意する場面
- 面接・上司・顧客との会話ではスラングを避ける。
- 同僚間でも金額の具体的な話題はタブーとされることが多い。
- 特にアメリカやイギリスでは「給料の話=プライベートな話題」。慎重さが大切。
アメリカでは「money talk(お金の話)」は親しい関係でのトピック。
ヨーロッパでは、収入額を口にするのはかなり無作法とされることも。
つまり、英語の世界では「どの単語を使うか」よりも、「どの場面で話すか」が重要なのです。
おわりに
paycheck は受け取りの実感、salary は制度としての固定給。まずはこの軸を意識すれば迷いません。日常なら paycheck、ビジネスは salary。さらに wage が時間比例の報酬と覚えておけば、説明も説得力も増します。
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