「深夜に『キュッ』という音が聞こえた。これってゴキブリの鳴き声なの?」
そんな体験をした人は少なくありません。真夜中に不意に聞こえる小さな音は、不安や恐怖をかき立てますよね。特にゴキブリは「鳴かないはず」というイメージがあるため、余計に疑問が深まります。
本記事では、ゴキブリは本当に鳴くのか、そして『キュッ』という音の正体は何なのかを科学的な観点から解説します。読み終える頃には、「音の正体」を冷静に理解できるはずです。
ゴキブリは鳴くのか?
まず最初に押さえておきたいのは、ゴキブリには人間や鳥のような声帯が存在しないという事実です。声帯がないため、私たちがイメージするような「鳴き声」を出すことはできません。これは昆虫全般に共通する特徴で、虫が音を出す場合は「声帯」ではなく、体の一部をこすり合わせる摩擦音(ストリドレーション)や、呼吸器官から発せられる音によって生じます。
日本に生息する代表的なゴキブリ、例えばクロゴキブリやチャバネゴキブリなどは、基本的に鳴かないとされています。家庭で遭遇するほとんどのゴキブリがこの種類に属するため、「ゴキブリは鳴かない」というのが一般的な理解になっているのです。
しかし、世界的に見れば少し事情が異なります。海外には約4,000種以上のゴキブリが確認されており、その中には例外的に音を発する種類もいます。例えば:
- マダガスカルオオゴキブリ: 気門(呼吸の穴)から空気を押し出して「シューッ」という音を出す。威嚇や求愛行動の一環とされる。
- 一部の熱帯種: 翅(はね)や脚をこすり合わせ、微弱な「キュッ」「カサッ」という音を出すことが観察されている。
このように、ゴキブリが「音を出す」ことは完全に否定できません。ただし、それはあくまで特殊な種類や限られた状況であり、日本で一般的に見られるゴキブリは「鳴かない」と考えてよいでしょう。
「キュッ」という音の正体とは?
実際に耳にした「キュッ」という音は、本当にゴキブリが発したものなのでしょうか。
科学的に考えると、いくつかの有力な説があります。それぞれを詳しく見てみましょう。
◆ 摩擦音説
ゴキブリは移動中に脚や羽がこすれることがあり、その摩擦で「キュッ」と似た音が発生することがあります。
特に狭い隙間を通過するときや、羽ばたこうとする瞬間に聞こえるケースが多いとされます。
◆ 呼吸音説
一部のゴキブリ(マダガスカルオオゴキブリなど)は、気門と呼ばれる呼吸器官から空気を押し出して「シューッ」や「プシュー」という音を出すことが知られています。
日本の一般的なゴキブリでは確認されにくいものの、「弱い呼吸音が耳に残った可能性」もゼロではありません。
◆ 環境音説
ゴキブリが家具や壁を這う際の摩擦音や、物に触れたときの音を「鳴き声」と誤解する場合があります。
特に夜間は周囲が静かで音が強調されるため、「思わず鳴いたのでは?」と錯覚しやすいのです。
◆ 誤認説
実際にはゴキブリではなく、他の虫や動物が出す音を聞いているケースもあります。
・コオロギやカネタタキ → 小さな「チッ」「キュッ」という音を発する
・ヤモリ → 「キュッキュッ」と鳴く習性あり
・ネズミ → 超音波に近い声を発し、人間の耳には「キュッ」と聞こえることもある
こうした音を夜中に耳にすると、ついゴキブリの鳴き声だと勘違いしてしまうのです。
ゴキブリの音と勘違いされやすい生き物
「ゴキブリが鳴いた!」と思っても、実際には別の生き物の音であることが多いのです。特に夜行性の小動物や虫は紛らわしい音を出します。
- コオロギやカネタタキ: 小さな「チッ」「キュッ」という鳴き声を発する。
- ヤモリ: 「キュッキュッ」と鳴く習性がある。
- ネズミ: 超音波に近い鳴き声を発し、人間の耳には「キュッ」と聞こえることがある。
実際に「鳴き声」を聞いた人の体験談
インターネット上には「ゴキブリが鳴いた」と感じた人の体験談が多く寄せられています。ここでは、その一部を紹介します。
◆ 夜中に台所で聞いた音
「夜中に冷蔵庫の近くで『キュッ』という小さな音を聞きました。見に行ったらゴキブリが1匹走り去ったんです。まるでその動きと同時に音がしたようで、鳴いたのかと思って本当に怖くなりました。」
◆ 掃除中に遭遇したケース
「ゴキブリを追い払おうとしたら『キュッキュッ』という音が聞こえました。あとで調べてみると、どうやら羽をこすった摩擦音だったみたいですが、その場では鳴き声だと思い込んで鳥肌が立ちました。」
◆ 別の生き物だったパターン
「寝室で『キュッ』と聞こえたのでゴキブリかと思ってパニックに。翌朝見たら窓の外にヤモリがいて、どうやら鳴いていたのは彼の方でした。ゴキブリの鳴き声だと思っていたのは完全に勘違いでした。」
これらの体験談からも分かるように、「キュッ」と聞こえた音の正体は必ずしもゴキブリとは限りません。恐怖心が強いと、実際には環境音や別の生き物の声を「ゴキブリの鳴き声」と結びつけてしまうことがあるのです。
ゴキブリが音を出すとしたらどんなとき?
もし本当にゴキブリが「音」を出すとしたら、それはどんな状況なのでしょうか。
通常は鳴かないとされるゴキブリですが、特殊な場面では「摩擦音」や「動作音」が発生する可能性があります。
◆ 強いストレスや危険を感じたとき
人間に発見されて追い詰められた瞬間や、捕まえられそうになったときなど、極度のストレス下では脚や翅の動きが激しくなり摩擦音が生じることがあります。
この音が「キュッ」と聞こえる場合があり、「鳴いた」と錯覚されやすいのです。
◆ 羽を広げて逃げるときの摩擦音
ゴキブリは危険を察知すると翅を広げて素早く飛び立つことがあります。このとき、翅と体がこすれることで一瞬「キュッ」という摩擦音が発生することがあります。
特に狭い空間や家具の間をすり抜けるときは、物との接触音も加わり、より「鳴いたように」感じられるのです。
◆ 仲間同士の威嚇や交尾行動時
昆虫の中には、求愛や威嚇の際に摩擦音を使う種類がいます。ゴキブリも同じように、交尾行動や縄張り争いの最中に体を激しく動かし、その過程で音が発生する可能性があります。
ただし、日本の一般的なゴキブリでこれが確認された例はほとんどなく、あくまで「例外的な可能性」と考えるのが妥当です。
おわりに
深夜に聞こえる「キュッ」という音──それは不気味で、つい「ゴキブリの鳴き声では?」と考えてしまいます。しかし、日本のゴキブリは基本的に鳴かないとされています。聞こえた音の多くは、摩擦音や他の生き物の鳴き声と考えるのが科学的には妥当です。
都市伝説のように語られる「ゴキブリの鳴き声」ですが、正体を知ることで余計な不安は減らせます。もしあなたが次に「キュッ」という音を聞いたら、冷静に「これは鳴き声ではなく、別の要因かもしれない」と捉えてみてください。
そして何よりも大切なのは、ゴキブリ自体を室内に入れない工夫。清掃や隙間対策をすることで、夜中の「謎の音」との遭遇率も下げられるでしょう。