「そこの衣紋掛けとって？」と言われて、
「え？衣紋掛けって何？」となったことはありませんか？
衣紋掛けとはハンガーのことですが、見た目では、衣類をかけるための「衣紋掛け」と「ハンガー」に大きな違いは認められないかもしれません。
しかし、特に年配の方々がハンガーのことを衣紋掛けと呼ぶ場合があり、その背後には興味深い歴史が隠れています。
日常生活では、この二つの語は同じ意味で用いられることが多いですが、実は衣紋掛けが主に着物用、ハンガーが洋服用として区別されるという明確な違いが存在します。
この二つの道具の違いや、名称が変化した背後にある理由について、詳しく探ってみました。
また、「衣紋掛け」という語が徐々に使われなくなり、いわゆる「死語」になりつつある現象にも触れています。ファッションにまつわる言葉の中には、気づかないうちに忘れ去られてしまった用語も少なくありません。そういった言葉たちも紹介していきますので、あなたの日常言語にも、もしかすると死語が紛れ込んでいるかもしれませんね。
衣紋掛けの由来やハンガーの違いは？
衣紋掛けとハンガーの主たる違いは、使用される衣類の種類にあります。
衣紋掛けは着物に、ハンガーは洋服に特化しています。
しかし、日常的な会話の中ではこの差はほとんど意識されません。「衣紋掛けをとって」と言われれば、それはハンガーのことを指していると理解されます。
しかしながら、近年「衣紋掛け」という言葉を耳にする機会は減少しています。私の祖母も、ハンガーのことを「衣紋掛け」と呼んでいたので、私自身も自然とそれをハンガーと同一視するようになりました。
「ハンガー」という言葉を普段から使う私たちにとって、「衣紋掛け」がなじみ深いものではないのは、それほど驚くべきことではありません。
ここでは、衣紋掛けとハンガーの基本的な違いと、その用語の変化について、さらに詳しく見ていきます。
衣紋掛けの由来は？
「衣紋掛け」の由来は、着物の背部に位置する襟元を指す「衣紋」から来ています。
着物を適切に保管し、その形を保つためには、この衣紋部分を吊るして空気に触れさせながら乾かす必要がありました。
このような保管の仕方が、「衣紋掛け」という名前の由来となっています。
衣紋掛けとは？
衣紋掛けは、着物を適切に保管するために古くから用いられてきた、伝統的な日本のアイテムです。この道具は、一本の棒を使って着物の袖を通し、吊り下げて展示することが可能です。
オンラインで「衣紋掛け」と検索すると、しばしば「着物用ハンガー」という表現に出会います。これは、衣紋掛けが着物を掛ける専用のハンガーであるということを、直接的に示しています。
過去には、特に昭和時代までの日本の家庭では、着物が一般的な衣類であり、主に箪笥で畳んで保管されていました。衣紋掛けは、着物を湿気から守ったり、着用後に汗を乾燥させるために使われていました。
その主な機能は乾燥させることにあり、現代のハンガーが衣服を整理収納するために使われるのとは異なります。
特別な機会に着物を探しに行くと、衣紋掛けに掛けられた着物が展示されている光景を見ることがあります。さらに、「衣桁」とも呼ばれる、鳥居のような形状の着物掛けもあり、これは着物の柄をより美しく見せるために、インテリアとしても利用されます。
ハンガーとは？
ハンガーは、洋服を吊り下げて収納する目的で設計された比較的新しい道具です。
多様なデザインや素材で作られており、洋服の形を整えつつ保管することができます。衣服を洗濯した後の乾燥や、クローゼット内での整理にも役立ちます。
100円ショップで手軽に購入できるなど、日常生活に密接した収納アイテムとなっています。ベルトやズボン、スカート専用のハンガーなど、特定の衣類に特化したものもあり、非常に便利です。
衣紋掛けとハンガーは、どちらも衣類を吊り下げるという基本機能を持っていますが、それぞれが持つ文化的背景や用途には顕著な違いがあります。
かつて衣紋掛けと呼ばれていたアイテムが、現在ではハンガーとして広く認識されるようになった背後には、どのような歴史や文化の変遷が存在するのでしょうか？この変化について、詳細を次に解説します。
衣紋掛けからハンガーに変わった理由は？
衣紋掛けがハンガーへ変わった理由は、日本における服装文化の変化が大きく影響しています。
明治時代になると、洋装を取り入れる人が増え始めましたが、その頃の洋服やハンガーはほとんどが海外からの輸入品で、高価なアイテムでした。
それまで着物の保管に使われていた衣紋掛けは、洋服を扱う際にも用いられるようになります。
具体的には、洋服を箪笥から取り出しシワを整えたり、着用後の汗を乾かすために使われました。初期のハンガーは、実質的には衣紋掛けを肩幅に合わせて小さくしたもので、形状は衣紋掛けに近かったのです。
ハンガーが高級品だった時代には、多くの家庭で従来の衣紋掛けが洋服を掛ける用途に転用されていました。しかし、昭和30年代に洋服を着る人々が増え、日本国内で手頃なプラスチック製ハンガーが製造されるようになると、衣服の保管方法も大きく変わります。
収納空間が箪笥からクローゼットへと移行し、洋服を掛けておくためのハンガーが広く使われるようになりました。このような変化と共に、着物を着る機会が減り、衣紋掛けを持つ家庭も減少していきました。
最終的に、「衣紋掛け」という用語は次第に使用されなくなり、「ハンガー」という言葉が主流になりました。ハンガーを今でも「衣紋掛け」と呼ぶ高齢者の方々がいるのは、過去の名残として残っているからです。
衣紋掛けからハンガーへのこの移行は、時代の変化や洋服を初めて着た当時の人々の思い出を垣間見ることができる貴重な物語です。これからも変わり続けるファッションの流れの中で、今は使われなくなった言葉を振り返るのも興味深いですね。
衣紋掛けは死語？方言？
若者からは「衣紋掛けって知っていますか？どこかの方言でしょうか？」と疑問に思われるほど使われなくなった衣紋掛けという言葉。
まず、衣紋掛けは方言ではありません。
「実はハンガーのこと、昔は衣紋掛けって呼んでたんだよ」と話すと、「それって特定の地域の言葉？」なんて、若者から驚かれることもあります。今どきの若者には、衣紋掛けという言葉自体がほとんど知られていない、言わば「死語」となってしまっています。
それでも、ファッションにまつわる用語は時代の流れと共に変わり続けてきました。昔ながらの表現が今では少し恥ずかしく感じることもありますが、いくつか挙げてみましょう。
- タートルネックを昔は「トックリ」と称していた
- ベストやジレのことを「チョッキ」と呼んでいた時代も
- 「スパッツ」は今では「レギンス」として知られる
- 「ジーパン」は現代では一般的に「デニム」と呼ばれる
- 昔の「トレーナー」は今では「スウェット」として親しまれている
これらの言葉をあなたは普段から使っていますか？自分自身40代としては、これらの言葉のいくつかについては「そういえば…」と思うものがあります。
例えば、「トックリ」という言葉は、衣紋掛けと同じくらい古くからある言葉に感じますが、普段使いする機会は少ないでしょう。これは、祖父母世代の方と話すときに出てくる言葉かもしれません。
また、「チョッキ」という言葉が現代では「ベスト」や「ジレ」に言い換えられていますが、この変更がスムーズにできているかと言われれば、ちょっと考えてしまいます。特にオシャレなベストを「ジレ」と呼ぶのは、まだ慣れないものです。
ファッション業界では、スパッツからレギンスへ、ジーパンからデニムへ、トレーナーからスウェットへと、用語が更新されています。知らず知らずのうちに古い表現を使ってしまい、若い世代に「それって何？」と聞かれるかもしれませんね。
でも大切なのは、使う言葉が時代や相手に合わせて選ばれるべきだということ。衣紋掛けやトックリのような言葉が古いと感じることがあっても、相手に合わせた言葉選びがコミュニケーションをスムーズにします。死語として使わないではなく、話す相手に合わせて柔軟に言葉を使い分けることが、これからも大切ですね。
終わりに
以上、衣紋掛けからハンガーに変わった理由、違いや由来等についてお伝えいたしました。
改めて概要をまとめます。
- 用途による区分: 衣紋掛けは伝統的に着物の保管や乾燥に用いられる特有の道具です。対して、ハンガーは主に洋服を掛けるための普遍的なアイテムとして位置づけられています。
- 日常会話での扱い: 日々の生活の中で、衣紋掛けとハンガーという言葉は区別なく使われることが一般的です。多くの人にとっては、その違いを意識することは少ないでしょう。
- 衣紋掛けの役割: 着物の保護という観点から開発された衣紋掛けは、湿気や汗から着物を守るため、また形を整えるために長く使われてきました。
- ハンガーの機能: ハンガーは洋服を吊り下げて収納する際に利用されるアイテムで、衣服を干したり、クローゼット内で整理するために広く用いられています。
- 文化の転換点: 日本の服装文化が着物中心から洋服中心へと変化したことが、衣紋掛けからハンガーへの移行を促しました。
- ハンガーの普及: 洋服の一般化に伴い、かつては高級品であったハンガーが国内生産されるようになり、一般家庭にも広まっていきました。
- 衣紋掛けの現況: 現代では衣紋掛けを持つ家庭は減り、その存在や名称を知る機会も少なくなっています。
- 言葉の進化: かつては一般的だった「衣紋掛け」という言葉は、次第に使われなくなり、死語とされるようになりました。
- ファッション用語の移り変わり: トックリ、チョッキなどの古いファッション用語も、時代と共に使われなくなっています。
- 時代と共に変わる言葉: 以前は日常的に使われていた多くの言葉が、今では若い世代にとっては通じない、過去のものとなっています。
このように、衣紋掛けとハンガーの変遷を通じて、時代の移り変わりと共に言葉も変化していく様子を垣間見ることができますね。
